【消費税】国外事業者からインターネット等を介して提供されるサービスの利用:インボイス制度と仕入税額控除の取り扱いの変遷

仕入税額控除の取り扱いの変遷

近年、デジタルサービスの利用が拡大する中、国外事業者から提供される電気通信利用役務に対する消費税の取り扱いは大きく変化してきました。特にインボイス制度の導入とプラットフォーム課税の開始により、企業の仕入税額控除の可否が変わってきています。本記事では、その変遷について解説します。

電気通信利用役務の提供とは

まず、「電気通信利用役務の提供」について確認しましょう。これは、インターネット等の電気通信回線を介して行われる以下のようなサービスを指します。

  • 電子書籍・音楽・動画の配信
  • クラウドサービスの提供
  • オンラインゲーム
  • アプリのダウンロード
  • ソフトウェアのサブスクリプション

これらのサービスは、「事業者向け」と「消費者向け」に区分されます。この区分は、エンドユーザーではなく契約形態により判断されます。

2015年の改正:内外判定基準の見直し

2015年10月の消費税法改正により、電気通信利用役務の提供に関する内外判定基準が変更されました。

改正前:サービス提供者の所在地で判定

  • 国外事業者からのサービス → 不課税

改正後:サービスを受ける者の住所地で判定

  • 国内でサービスを受ける → 課税取引

この改正により、国外事業者から受けるデジタルサービスも消費税の課税対象となりました。

登録国外事業者制度(2015年~2023年9月)

インボイス制度導入前は、消費者向け電気通信利用役務の提供について「登録国外事業者制度」により仕入税額控除の可否が決まっていました。

消費者向け電気通信利用役務の提供

登録国外事業者からの仕入

  • 仕入税額控除:可能
  • 要件:請求書等に登録番号の記載があること

登録国外事業者以外からの仕入

  • 仕入税額控除:不可

事業者向け電気通信利用役務の提供

リバースチャージ方式により、サービスを受けた国内事業者が申告・納税を行い、同時に仕入税額控除が可能でした。

インボイス制度導入後(2023年10月~2025年3月)

2023年10月のインボイス制度導入により、取り扱いがさらに変化しました。

消費者向け電気通信利用役務の提供

適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)からの仕入

  • 仕入税額控除:可能
  • 要件:適格請求書の保存

適格請求書発行事業者以外からの仕入

  • 仕入税額控除:原則不可
  • 経過措置:2029年9月30日まで、一定割合の控除可能
    • 2023年10月~2026年9月:80%控除
    • 2026年10月~2029年9月:50%控除

登録国外事業者制度は廃止され、令和5年9月1日時点で登録国外事業者であった者は、適格請求書発行事業者とみなされました。

事業者向け電気通信利用役務の提供

引き続きリバースチャージ方式が適用され、帳簿保存により仕入税額控除が可能です。

プラットフォーム課税導入(2025年4月~)

2025年4月1日から、新たに「プラットフォーム課税」が導入されました。これは、国際的な課税の公平性を確保するための制度です。

制度の概要

国外事業者が特定プラットフォーム事業者を介して行う消費者向け電気通信利用役務の提供については、特定プラットフォーム事業者が当該役務の提供を行ったものとみなされます。

特定プラットフォーム事業者の例

  • iTunes株式会社(App Store、Apple Books等)
  • Google Asia Pacific Pte. Ltd.(Google Play)
  • アマゾンウェブサービスジャパン合同会社(AWS Marketplace)
  • 任天堂株式会社(Nintendo eShop)

仕入税額控除への影響

プラットフォーム課税の導入により、企業にとって仕入税額控除の可能性が広がりました

特定プラットフォーム事業者を介した取引

  • 国外事業者が適格請求書発行事業者でなくても、特定プラットフォーム事業者がサービス提供者とみなされる
  • 特定プラットフォーム事業者が適格請求書発行事業者であれば、適格請求書の発行を受けられる
  • 結果として、仕入税額控除が可能になる

特定プラットフォーム事業者を介さない取引

  • 従来どおり、国外事業者が適格請求書発行事業者であれば仕入税額控除可能
  • そうでなければ、仕入税額控除は原則不可(経過措置あり)

実務上の注意点

1. 請求書の確認

2025年4月以降、特定プラットフォーム事業者を介したサービスの請求書には、以下の点に注意してください。

  • 適格請求書の記載要件を満たしているか
  • 登録番号が特定プラットフォーム事業者のものになっているか
  • 消費税額が適切に表示されているか

2. 取引区分の判断

仕入税額控除の可否を正しく判断するため、以下を確認しましょう。

  • 「消費者向け」か「事業者向け」か(契約内容で判断)
  • 特定プラットフォーム事業者を介しているか
  • 国内事業者か国外事業者か

3. 記帳と証憑保存

適切な仕入税額控除を受けるため、以下を徹底しましょう。

  • 適格請求書の適切な保存
  • 帳簿への正確な記載
  • 取引類型に応じた区分経理

まとめ:仕入税額控除の取り扱い一覧表

画像
※特定PF:特定プラットフォーム

おわりに

国外事業者のデジタルサービスに関する消費税の取り扱いは、制度改正により複雑化しています。

これまで仕入税額控除ができなかったサービスについても、特定プラットフォーム事業者経由であれば控除できる可能性が出てきました。2025年4月以降の請求書を注意深く確認し、適切な税務処理を行うことが重要です。